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獣医師広報板のキャラクター:ココロちゃん動物病院のX線撮影の線量について
文章:プロキオン(獣医師)
初出:2005/11/17
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こどもあんぜんサイト宣言

この質問は、本来であれば、勤務されている病院の院長先生にお尋ねして貰わなくてはならないのですが、キチンと答えられる院長先生というのも、あまりおられないように思います。
(教育システムがそこまで行っていませんでしたので)
まして、AHTさんということであれば、明確な回答ができる方というのは、稀な存在になるかもしれませんので、私がレスしてしまいます。

まず、X線被爆についてどう考えますか? という前に実際に被爆しているのでしょうか?

何をもって「被爆」とするのかの定義が、まず第一なのですが、一次照射のX線を浴びているのであれば、それは機器の取り扱いや動物の保定に問題があるように考えられます。
散乱線による二次被爆のことであれば、蛍光バッチやポケット線量計で測定されてしまう程の積算量に及んでいるのでしょうか?
もし、そうであれば、これも同じことが言えます。
まあ、普通であれば、毎月の測定結果は、「0」か「測定限界以下」が報告されてきているはずです。

放射線には、自然界における天然の放射線が存在し、その被爆線量は、2.4msVです。
(宇宙線から0.36、大地から0.42空気から1.63)
私達は、特別X線に関わる仕事をしていなくても、生まれた時から、毎年これだけの線量を被爆していることになります。

この量がどれくらいの線量かと言うと、通常の人間の胸部X線撮影における直接被爆する線量として、0.05〜0.1msVとなりますので、およそ、年間24〜48回撮影したことに相当します。
すなわち、毎月2〜4回X線の集団検診を1年間受け続けて、やっと自然放射線2年分に相当するということになります。
言葉とすれば、やや妥当性を欠きますが、1年に2歳の歳をとったということにでもなりますか。
ここで大事な事は、測定可能な直接の被爆線量として計算したらということです。
測定できないレベルの散乱線量では、これとすら比較しようがないということです。

獣医療法においては、1年間の許容被爆線量を50msVとしています。
X線の測定用具における測定結果が、この値に到達しえるのかというと、これは、あまりにむちゃな撮影を実施していない限り、現実離れした数値です。
0とか測定限界以下の数値であれば、いったい何年分を積算したら、この数値に達するのか、ちょっと分かりようがないのです。

何故、このような数値を設定してしまったのかといえば、人間の方の「医療法」の数値をそのまま借りてきたからです。
人間の方の「医療法」では、放射性同位元素の使用や保管を想定していますので、こちらは、動物のX線の0.02秒とか0.1秒とかの照射時間とは異なり、24時間ずっと放射線を出し続けています。
そして、決してその放射線量も0という数値にはなりません。
このような放射性同位元素を取り扱う機関と同列にしてしまったからなのです。
もっとも、人体そのものの許容できる線量に差異があるわけでもないので、かまわないと言えばかまわないことになりますが。

あと、女性ということであれば、腹部の許容線量は、13msVという数値がありますが、これはさらに妊娠が発覚した時から出産までに10msVとなっています。
実は、ここに問題があって、獣医療法では、この数値をもって作業に就くことを認めておりますが、労同案全衛生法では、妊婦の就労を認めていないはずです。
これは、被爆線量が測定できるできない如何にかかわらずのことであったと記憶しています。
#獣医療法では、許容数値が大きいので、測定できない線量のままであれば、出産時まで就労できてしまいます。

そして、医療被爆に関して言えば、1956年に国連の科学委員会からX線撮影時の「生殖腺の被爆線量」の測定報告という課題が出されており、
1.撮影時間がひじょうに短い。
2.主な線束が生殖線に入らず、散乱線のみでは極めて微量のため測定が困難である。
3.適切なファントムがなく、若い女性の死体が手に入りにくくサンプルが集めにくい。
というような、問題点があったそうです。

2については、そのために新たに特別に測定器具の作成が必要だっとそうです。
3のファントムというのは、生殖腺に達するまでに人体が吸収してしまう線量に相当する仮想物体です。
人体の各組織によって線量の吸収率が異なるので、同じ線量を被爆しても、組織によってダメージが違ってくるからです。
まあ、そのような試行錯誤から得られた結果というと、日本人1人当たりが1年間に受ける「平均生殖腺量」は10〜30mremという数値が得られたということだそうです。
参考までに、「遺伝子有意線量」は、39mrem、白血病有意線量としての骨髄線量は、胃の間接撮影の場合で、14.5mradで、胸部集団検診の場合で9.3mradということになるそうです。

急に単位がシーベルトから、レムやラドに変わりましたが、これは、そのことについて記載している文献の記載がそのようになっているからです。
単位については、換算するのも勉強のうちですので、そのまま転載しました。
そして、数値については、これは日本の数値であって、国によって数値に差異があります。

さて、あなたの病院のX線は、どのくらいの線量で実施されていますでしょうか?

詰まるところ、0にはどのような数字(大きかろうが、小さかろうが)を積算しても、0にしかなりません。
蛍光バッチやポケット線量計の測定値が、0であれば、計算上の値しか出しようがないことなのです。
被爆値が報告されてくるようであれば、それはすなわち「事故」ということになります。
防護服まで着用しているのであれば、さらに限り無く0に近いということになります。
ということで、X線撮影装置の取扱いや動物の保定に遺漏がない限り、心配されるようなことは起こり得ないはずなのです。
さらに付記するなら、動物病院で使用されているレベルの装置であれば、「放射線障害防止法」に規定される放射線にすら該当しないレベルであると言えます。

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