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獣医師広報板のキャラクター:ココロちゃん動物実験の実習など、生き物を殺さずに獣医師になれませんか
文章:プロキオン(獣医師)
初出:2003/06/16
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獣医師の本質は、死と向き合うことにあると思います。
国内では全国に16の大学に獣医学科がありますが、獣医学部となると北大にしかなかったはずです。
他は全て農学部の中にあるわけであって、国家試験は農林水産省で、その後の獣医師の届け出は農務部畜産課となります。
つまり、獣医師の業務の主眼は肉畜の生産であって、これに附随するかのように食品部門や医薬品製造部門があるわけです。
私も、ここで過去なんども町の診療医というのは1〜2割の少数派であることを獣医師の志望者に述べてきました。
では、この少数派が「死」と無縁であるかというと、それこそ否でしょう。
むしろ、もっとも出会いたくない形での死に遭遇するケースが多いと考えています。
獣医師である限り、「死」と無縁ですごすことはできません。
さて、大学の解剖実習は、生体解剖ではありません。
厳密に区別して欲しいと私は思います。
大学も大きくなると毎年1〜2人は、「解剖に供される犬も、病院で治療を受ける犬も同じ犬の命なのにおかしい」と言い出す者がいます。
こういう人間は同級生から本当に嫌われます。
同じ命であることなど、誰しも百も承知していることであって、みなその思いを黙って飲み込んで実習に参加しているのです。
それこそが、獣医師になるために「動物の死」に立ち会う第一歩であり、模型や図表では代わりにならない「命の重み」なのです。
解剖実習は低学年で実施されますが、ある者は大学進学を志す高校生の段階で学生の就職先から気がつきます。
また、ある者は、大学へ入学してから教科の内容で気がつきます。
通過儀礼なんだと割り切ろうとする者もいます。
学生によって様々な思い・感じ方・受け止め方はありますが、教師の側からすれば、献体となっている死体を冒涜する行為にこそ目を光らせることになります。
また、そこにこの実習の大事な目的があります。
# プレッシャーから、死体を弄ぶ者もでることがあります。
つい、茶化してふざけたくなってしまうんです。
お茶らけてしまう学生は教師が叱ることができますが、解剖が嫌だと泣いてしまう学生は叱ることがむずかしいです。
その反面、同級生の目は厳しいです。
なぜ、解剖台の前に辿り着くまでに自分なりの回答を見つけておかなかったのか、なぜ、心の整理もつけられずに取り乱すのか、なぜ、自分だけがさも動物好きのように振る舞うのかと。
それで死んだ動物が生き返るわけではないし、感謝してくれるわけでもない。
動物の死を無駄にしないということしか、学生には選択肢はないのです。
だから、ふざけてしまう者は「しょうがない奴」で許せますが、妙な理屈で解剖に参加しない者こそ、死体を冒涜しているとみなされます。
解剖実習は低学年で実施されると言いましたが、質問者であるみみさんが24歳ということであれば、すでに大学を卒業しているか、最終学年くらいに在籍している年齢に相当します。
Big1先生からのレスでもこの点に触れられておられますが、獣医師がどういう職業なのかを認識していても良いように思います。
同時になぜ、解剖実習が必要とされるのか、命の重み向き合う必要性というものが理解できても良いように思います。
獣医師に仕事に興味がないという方であれば、私も先生もこのようなことは申しません。
また、小学生や中学生でれば、理解できなくても良いでしょう。
でも将来の職業として考えはじめている高校生であれば、理解できることがらなのですよ。
とくに、農業高校から進学して同級生は一様に私よりもしっかりとした考えをもっていました。
私の所属していたのは病理学研究室でしたが、病理解剖こそ死後時間が経過した死体では意味をなしませんので、生体解剖に近いものがありました。
通常、病理解剖は研究室の学生がお手伝いをするのですが、他の研究室の学生だって、時間が空いていれば見学にきます。
みんな、すこしでも良い場所から見ようと場所とりもあります。
何故かと言えば、やはり早く一人前の獣医師になりたいからであり、実習でお世話になった動物達のためでもあります。
命を背負おう、命と向き合うということは、無駄な殺生をしないことです。
できる限り命の無駄を出さないためには、検体として目の前にあるものを決して見のがさないことであり、粗略に扱わないことなのです。
例え、開業して臨床医になったところで、お金を貰いながら、自分の患者で手術の練習をしてよいわけではないのです。
心を持たないメスは、ただの凶器にすぎません。
血のかよったメスにするには命の重さを知らなくてはなりません。
模型を解剖することでは、私には命の重さは分かりません。
むしろ目をつぶってやっても恐くありません。
時間の早さを自慢するようになるかもしれません。
命の重さを知り、死を恐れ敬う気持ちが獣医師には、必要であると考えます。
みみさんは、人間の例をあげておられましたが、人間でも生体解剖や人体実験に走った例は過去にありますよ。
知識だけに走れば、誰にしもそういう危険な可能性はあるのですよ。
それを防ぎたいのが、教育する側の人間なのです。
ある大学の先生は、学生に解剖された死体の組織をまたひとつひとつ集めて犬の形にしているのだそうです。
1つは実習の用の犬の死体が入手しにくくなっているためであり、もう1つは1つの死んだ命ができる限り多くの獣医師を育ててくれるように、命を無駄にしないためです。
私達は自分1人の力でかってに獣医師になれるわけではないのです、教師や多くの実習の材料となった命に支えられてきているのです。
もう一度、最初に戻りますが、獣医師というのは、疾病に罹患した家畜であれば、と畜場に出荷する時期を決めなくてはなりません。
家畜にとっては死刑宣告者なのです。
犬や猫であれば、飼い主が治療を望まなければ、かってに治療することはできません。
また、どんなに望んでも助けることができない病気もあるのです。
人間が生き物の生死を自由にできると考えることこそが傲慢といえないでしょうか?
死と向き合うのが獣医師の仕事なのです。
それをあくまでも避けたいのであれば、別の人生を選択される方が良いでしょう。
ただ、単に動物が好きというだけなら、他の職業の方が満足できるはずです。
解剖実習を経験して、もう後戻りはできないと腹を括る学生も多いのですが、それを否というのであれば、その先へは全然進めません。
Big1先生のお話について、うなづいている先生方は多いのではないかと私は思いますよ。

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