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獣医師広報板のキャラクター:ココロちゃん犬ブルセラ病撲滅を目指して
(2007/03/05初稿、最新更新日:2018/07/25)
◆こどもあんぜんサイト宣言◆
こどもあんぜんサイト宣言

◆管理人の個人的意見表明:(2007/03/05)
現在マスコミをにぎわせている大阪府犬ブルセラ病殺処分ですが、獣医師広報板ではすでに意見交換されております。
http://www.vets.ne.jp/log/search/data/0000/200702/42.html
http://www.vets.ne.jp/log/search/data/0000/200702/46.html
http://www.vets.ne.jp/log/search/data/0000/200702/56.html
http://www.vets.ne.jp/log/search/data/0000/200702/60.html
http://www.vets.ne.jp/log/search/data/0000/200702/61.html
獣医師としてはプロキオン先生、けりーずはうす先生のご意見だけしか伺えなかったですが、他の先生方も特に反論されていません。
私も獣医師ですが、プロキオン先生と同意見です。
獣医師は獣医の技で社会に貢献する仕事と心得ています。
私の学生時代、犬の臨床は大学でほとんど学びませんでしたが、公衆衛生学は必修でたたき込まれました。
「医者は病気にかかったときだけだが、獣医師は日々の健康的な生活を守る大事な仕事」と教授に言われ続けました。(医師の皆さんごめんなさい。)
万に一つでも人の健康を害する可能性がある場合、獣医師は眉一つ動かすことなく、必要な処置を行うべきだと考えます。
私は一獣医師として、大阪府の行政を支持します。
獣医師広報板主宰 川村幸治(ムクムク)

2008/10/08の獣医師広報板管理人の意見

昨日、大手新聞社から取材を受けました。名古屋で感染者が2人でて、今回東京・千葉のレンタル犬業者で陽性犬が検出されたことについてのものでしたので、犬の流通やレンタルなど犬で生計を立てて いる人が業界として対策を立てるべきではないか。
繁殖業者を登録制にし、ブルセラ陽性犬を繁殖に使用することを禁止し、犬を家庭に送り出す際は検査済み書を添付させる。
そのくらい、根本的なことを業界が行うべきではないかとコメントしました。
これって、実は前例があるのです。
http://www.jpc.or.jp/seturitu.html
これは日本愛玩動物協会の略歴ですが、昭和54年8月に特殊飼料ペットリン配布開始となっていますよね。
実はこの数年前に購入した小鳥からオウム病に感染した飼い主さんの事例がセンセーショナルに報道され、一般家庭に飼われている小鳥が捨てられ、もちろん小鳥は売れない状況になったことがあるのです。
小鳥の流通に頼っている業界は存続の危機になり、その際に協会を作り、オウム病の原因菌・クラミジアをフリーに出来る抗生物質・テトラサイクリン含有の餌ペットリンを配布して、事態を乗り切りました。
抗生物質入りの餌を流通させることは、今でも当時でも違法。
小鳥を飼う人の健康と業界を守るために、業界のリーダー達と政府が抗生物質が入っているとは一切うたわず、特殊飼料とだけ書いて配布させたいわば超法規的処置でした。
批判をすることは簡単だとは思うのですが、私はこの人達はよくやったと評価しています。
ブルセラに話を戻すと、今回の名古屋の人への感染例は業界人です。
しかし、これが一般飼い主の感染例が起こり、マスコミがセンセーショナルに報道する事態になれば一気に様相は急変する可能性があります。
陰性の家庭犬まで飼育を放棄する人が出現し、犬の業界は存続の危機にさらされる。
今のうちに対策を打つべきだと考えています。
楽観論者は一定の割合で陽性犬がいるのだから、どってことないんだという。
でもあるメーカーの車の3-5%が車内ホルムアルデヒドが基準値以上で、一部の人の健康を害する可能性があるとすれば、そのメーカーは必死になって改善するだろう。
そんな車を流通させては、企業として存続できないから。
私はこの問題に関しては、犬を購入する人は消費者、繁殖者(ブリーダー)はメーカーと置き換えて考えるべきであると考えています。
メーカーは3-5%問題のある製品を市場に出し続けてはいけない。
また犬を購入する人は、瑕疵のない商品を求める権利がある。
業界自体が危機感を持たなければ解決しませんが、いつかブルセラ菌陰性証明書付きの犬の販売が当たり前になる日が来ることを願っています。
犬を愛する人と家庭犬がともに健やかに過ごすために。

◆ブルセラ病・人畜共通伝染病FAQ

◆政府・地方行政・獣医師各団体・動物関係団体などへの要望書:

各位
拝啓

 日々、ご清祥のことと存じます。
 突然の送付にて失礼いたします。私はインターネットホームページ「獣医師広報板-獣医師と動物愛好家のコミュニケーション広場」を主宰する川村幸治と申します。
 http://www.vets.ne.jp/
 獣医師広報板は開設者である私と21名のボランティアスタッフによって運営し、1997年7月のサイト開設以来トップページ422万ヒット、月間70万ページビューの人気をいただいております。
 さてこのたび、 獣医師広報板では人畜共通感染症の蔓延防止について下記のような要望をまとめました。
 関係各位ご高覧のうえ、この要望を実現してくださるようなにとぞご尽力をお願い申し上げます。 敬具

  獣医師広報板 http://www.vets.ne.jp/
  主宰・川村幸治 kawamura@vets.ne.jp
  スタッフ一同

 この要望書は政府機関・地方行政・動物関係団体・獣医師団体などに一斉送付させていただいております。
 担当部局以外でこの要望書を受け取られた際は恐れ入りますが公衆衛生ご担当者へ転送をお願いいたします。

***********************************

◆獣医師広報板からの要望◆ 2007/4/3
「健康なペットの流通と飼育のために!!」 人畜共通感染症の蔓延防止について

大阪府内の犬繁殖場で人畜共通感染症であるブルセラ病の集団感染が確認され問題になっています。
この繁殖場からは感染犬がすでに流通してしまっている恐れや、流通ルート上の販売店などで感染を広げている懸念があります。
これをふまえ、要望いたします。

1.政府・地方行政におかれましては早急に、流通しているペットの人畜共通感染症罹患調査を実施されるよう要望します。
また同じく政府・地方行政におかれましては、動物取扱業のうち販売・貸出・展示の業種分類に該当する者に対しては人畜共通感染症および遺伝疾患についての周知徹底を図るとともに、所有動物に健康診断とワクチン接種および感染症検査を定期的に実施するよう義務づけることを要望します。
2.血統証明書発行団体におかれましては、血統証明書発行の際に人畜共通感染症検査済み証の添付を義務づけるよう自主規制されることを要望します。
3.全国の獣医師におかれましては、人畜共通感染症蔓延防止のため感染の早期発見に留意し、感染を疑うときは関係機関へ迅速な届け出をするとともに届け出義務のない人畜共通感染症についても報告に努められるよう要望します。

ペットは家族の一員です。
健康なペットの流通と飼育のため、関係各位ご考察くださるようお願い申し上げます。


  獣医師広報板 http://www.vets.ne.jp/
  主宰・川村幸治 kawamura@vets.ne.jp
  スタッフ一同


賛同者
ブログなどで獣医師広報板の要望書への賛同を表明された場合は連絡下さい。
この欄でリンクさせていただきます。


◆ブルセラ病学術資料リンク: ◆マスコミ報道:
New!!2018年7月25日長野の家族4人が新菌種の「ブルセラ症」感染 今回で2例目

2018年5月16日新菌種「ブルセラ症」で腎機能不全に 海外渡航歴のない男性が重症

2018年3月9日50代の獣医師が「ブルセラ症」に感染 症状はインフルと酷似

2012年5月18日韓国の野生動物、2割がブルセラ症に感染
人獣共通感染症のブルセラ症が野生生態系にまで広範囲に広がり、野生動物生息地の近くに住む住民や登山客が感染する危険性が高まっている。ブルセラ菌は神経系や呼吸器・循環器系など体内のさまざまな臓器に感染し、肝炎や脳炎などを発症する。ブルセラ症はこれまで、主に畜産農家の飼育牛で感染が確認されていたが、韓国の野生動物にまで広がっている実態が今回初めて明らかになった。
 本紙が17日に入手した農林水産食品部食品部(省に相当)傘下・農林水産検疫検査本部の資料によると、2008年から10年にかけて江原道、忠清道に生息する哺乳(ほにゅう)類の野生動物を対象にブルセラ症感染の実態を調査した結果、調査対象177匹のうち33匹(19%)で感染を示す陽性反応が出た。特に、住民と接触しやすい捨て犬などの野犬は、調査対象46匹のうち16匹(35%)が感染していた。
 また、韓国に約1000匹が生存している1級絶滅危惧種のヤギは、調査対象27匹のうち9匹(33%)が感染していたほか、キバノロやタヌキなどでも感染が確認された。この研究を担当した江原大学の韓泰旭(ハン・テウク)教授(獣医学)は、国内の野生動物がブルセラ症に感染しているという調査結果は予想外だったと話している。
 この調査とは別に、環境部の国立環境科学院が09年から11年にかけて実施した野生動物のブルセラ症感染調査でも、調査対象175匹のうち47匹(27%)の感染が疑われるという結果が出ている。
 政府関係者は、高病原性鳥インフルエンザなどの人獣共通感染症に対する懸念が世界的に高まっているため、こうした調査を実施したと説明している。
 野生動物のブルセラ症感染が確認されたことを受け、人への感染が懸念されている。人への感染は02年に初めて確認されて以来、昨年までに670人が感染した。致死率は2−5%以下とされる。
 2000年代半ばには、ブルセラ症に感染した乳牛2頭を飼育していた50代の韓国人男性が、肝臓や肺、胸膜などに感染。高熱など風邪の症状を訴え入院したが、約半月後に死亡した。全北大医学部のイ・チャンソプ教授は「トルコやスペインなどブルセラ症が頻繁に発生する地中海沿岸の国でも、人間が死亡したケースがあると聞いている」と話した。
 全北大の人獣共通伝染病研究所の所長を務めたブルセラ症専門家、ペク・ピョンゴル博士は「ブルセラ症は感染した動物の肉やその牛乳を摂取した場合に限らず、口や鼻などの粘膜や結膜、皮膚の傷などから感染することもある。野生動物との接触をできるだけ控え、畜産農家の周辺に野生動物が入らないよう柵を設置するなど、特別対策が急がれる」と指摘した。また、野犬だけでなく、農家が放し飼いにしている犬も、ブルセラ菌を持つネズミなどを食べる可能性があるため、特に注意が必要だと警告している。
 牛のブルセラ菌は1955年に韓国で初めて発生し、ここ10年間で年平均8700頭が殺処分されている。こうした状況の中、野生生態系への影響も避けられない見通しだ。ブルセラ菌は主に動物の生殖器系を攻撃し、流産や不妊症状などを引き起こすため、野生動物の繁殖能力が大幅に落ち込みかねない。韓泰旭教授は、特に高い感染率を見せたヤギに関しては、ますます絶滅の危険性が懸念されると話した。
朴恩鎬(パク・ウンホ)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

2012年5月8日「海岸に近寄らないで」 イルカとペリカン大量死でペルー当局
(CNN) ペルー北部の海岸でイルカやペリカンの大量死が相次いだ問題で、同国保健省は、大量死の原因が分かるまで首都リマおよび北部の海岸に近付かないよう呼びかけている。
同国北部の海岸では4月にペリカン538羽以上が死んでいるのが見つかった。ほかにも鳥類の死骸が見つかっており、国営テレビは北部ピウラ州プンタネグラからランバイエケ州サンホセにかけての160キロの海岸で、約1200羽の鳥の死骸が見つかったと伝えている。
一帯の海岸にはこれに先立ち、イルカ約900頭の死骸が打ち上げられていた。それぞれの死因については現在調査中で、関係があるのかどうかも分かっていない。環境省は4月の時点でイルカの死因について、モルビリウイルスやブルセラ菌といった病原菌が流行した可能性もあるとしていた。
保健省では、鳥などの死骸を扱う必要がある場合は手袋やマスクなどを着けるよう勧告している。

2012年1月26日世界初の民間研究所:国際小動物医学研究所が本格稼動 〜小動物(犬・猫)の繁殖学を研究〜
株式会社AHB(所在地:東京都江東区、代表取締役:川口 雅章)は、コンパニオンアニマル(犬猫等のペットのこと、以下 CA)の繁殖から飼育、健康サポートまで全てにおいて専門特化し、未だ勘と経験が頼りの旧態依然としたペット業界への科学的、学術的なアプローチを通して“真の産業化”を目指しています。そしてこの度、国際小動物医学研究所(所在地:東京都江東区、以下 Bio Plus)を稼動させる運びとなりました。
 Bio Plusは、世界においても犬・猫の繁殖学に関する第一人者でおられる日本獣医生命科学大学名誉教授・筒井 敏彦氏を招聘し、臨床繁殖学を基礎に、効率のよい繁殖のサポートや犬ブルセラ病の撲滅を目指す、ブリーダー様へ学術知識および技術を提供するための研究機関です。
 当研究所はブリーダーズクラブという会員制度を設けてサービスを提供させて頂いており、そのためより高度で有意義な会員向けのサービスを行うことが可能となります。

2012年1月10日中世の人骨に現代病ブルセラ症の痕跡、アルバニアAFP BB News
【1月5日 AFP】アルバニアで発掘した中世の人骨2体から、現代の感染症であるブルセラ症の痕跡を発見したとする論文が、3日の米学術誌「アメリカ形質人類学会誌(American Journal of Physical Anthropology」に発表された。
 ブルセラ症がアルバニアに、少なくとも中世から存在していたことを示す初めての発見だ。
 10〜13世紀の10代男性のものとみられる2体の人骨は、同国ブトリント(Butrint)で発掘された。米ミシガン州立大(Michigan State University)の研究チームが最新のDNA鑑定技術で骨を分析したところ、脊椎骨に顕著な病変が見つかった。当初は結核かと疑ったという。
 ブルセラ症は主に家畜がかかる病気で、地中海沿岸の農村部では一般的な疫病だ。感染した羊やヤギの生肉や非加工乳製品を食べることにより、ヒトにも感染する。
 世界保健機関(WHO)によると、ヒトに感染すると高熱や虚脱感などインフルエンザに似た症状が出ることがある。体重の減少や、骨や関節系の炎症もみられる。
 今回人骨が発掘されたブトリントは、かつてはローマ帝国の巨大な植民都市で、ビザンチン帝国の領土になったこともある。中世に大規模な洪水に遭ったため、見捨てられた地になった。(c)AFP

2011年11月05日百人超がブルセラ症感染 中国、検疫担当者共同通信
【北京共同】5日付の中国紙、北京青年報などによると、中国の内モンゴル自治区ウランチャブ市当局者はこのほど、市内の検疫担当者100人以上が人獣共通感染症のブルセラ症に感染したことを明らかにした。
同市では3月、ヒツジの大規模な検疫を実施したことから、検疫業務で感染した可能性が指摘されている。
 これまでの報道では、検疫時にヒツジから採血しており、4月になって腰痛や目まいなどの症状を訴える検疫担当者が相次ぎ、感染が判明。市当局者は採血が原因とは断定できないとし、既に80〜90人が快方に向かっていると強調した。

岩手日報社
 2010年12月02日 乳牛1頭にブルセラ症の感染歴 熊本で殺処分
 熊本県は1日までに、同県菊池市の酪農家が飼育していた生後19カ月の乳牛1頭について、人獣共通感染症のブルセラ症の感染歴があったとして殺処分した。
牛乳などの出荷はなく、飼育していたほかの乳牛数十頭への感染もなかった。
県畜産課は「人への健康被害の報告もなく、感染拡大の可能性はない」と説明している。

読売新聞
 2008年12月04日 [なんでも相談室]予防接種の悩み(1)犬ブルセラ症の予防法は?
Q 各地で犬ブルセラ症の被害が出ていると聞きました。予防接種で防ぐことはできますか。人間には感染しますか。
◇佐伯英治・麻布大学客員研究員・獣医学博士
◆ワクチンなく、完全排除困難
A 犬のブルセラ症は全国的に潜伏しているとみられ、感染率は数%と言われています。現在、犬ブルセラ症に有効なワクチンはありません。
 犬ブルセラ症とはブルセラ菌が原因の感染症で、メス犬は子宮などの生殖器、オスは前立腺や精巣上体(副こう丸)が感染部位です。
つまり、繁殖に障害を与える病気です。流産を繰り返す、精巣に炎症が現れる、などが主な症状です。ただ、通常は感染に気付きにくく、繁殖時の異常で分かる例が多いようです。
流産した子犬や出産後にはがれ出た胎盤、感染したオスの尿中の菌が、口や鼻から侵入して感染します。
動物病院で抗体検査を依頼して、万一陽性の場合は繁殖させないようにすることが、感染拡大を防ぎます。
一般家庭の飼い犬がブルセラ菌に感染する機会は少ないと思われます。
ただ、ブリーダーの元での感染や、不特定多数の犬が集まる場所での感染が無いという保証はありません。
この病気には抗生物質の長期投与が有効ですが、菌を完全に排除するのは困難です。
体外に出た菌は長くは生きられないので、消毒薬を使うことで、飼育環境をある程度清潔に保つことができます。
また動物のブルセラ菌には多くの種類があり、犬ブルセラ菌はまれに人に感染します。日本では1999年以降、5例の人体感染報告があります。
ただ、人は犬ブルセラ菌に対して比較的抵抗性が高いため、感染しても風邪に似た症状が表れる程度で、重症化する例はほとんどありません。

読売新聞
 2008年11月11日 二俣ドッグラン一時閉鎖 市川市、イヌブルセラ症対策で=千葉
市川市は、イヌブルセラ症の犬が確認されたとして、この犬が利用していた犬の屋外運動施設「二俣ドッグラン」(同市二俣新町)を一時閉鎖にした。消毒などの対策を講じ、安全確認できるまで「当面閉鎖する」としている。
市と市川保健所によると、飼育者は市内在住。10月に集団発生(陽性18頭、疑陽性38頭)の発覚した、浦安市のペット犬取扱店のレンタル犬と、9月に飼い犬を遊ばせた。自主的な検査を受けたところ、陽性反応が出た。感染経路は不明。
飼育者は今月7日、保健所に連絡。
保健所は市に情報を伝え、市は感染防止のため、8日から一時閉鎖の措置を取っている。
ドッグランは愛犬を放して自由に遊ばせる施設。
平日は数頭だが、休日は20〜40頭の利用がある。
イヌブルセラ症に感染した犬は死・流産する。
感染犬の死骸(しがい)、出産時の汚物にふれると、まれにヒトにも感染する。

北海道新聞
 2008年11月06日 ご注意 犬のブルセラ症*汚物介し人にも感染*発熱続き肝機能低下も
10月中旬に東京都と千葉県で犬18匹が「ブルセラ症」に集団感染していたことが分かった。
感染すると、犬はオスが精巣炎、メスは死・流産、子宮内膜炎を起こす。まれにだが人にも感染し、発熱など風邪の症状が出たり、重症になると肝機能の低下や大幅な体重減を起こしたりすることがある。
ペットを飼っていて原因不明の熱が続いた場合は注意が必要だ。(荻野貴生)
国立感染症研究所(東京)によると、ブルセラ症はブルセラ属菌によって引き起こされる。
家畜や人間にも感染する人獣共通感染症で、家畜伝染病予防法に基づく家畜伝染病に指定されている。感染源となる主な動物はヤギ・羊、牛、豚、犬で、感染が確認された家畜は同法により犬以外は殺処分される。
世界では年間50万人を超える人が新たに感染している。
国内では感染症法で届け出が義務づけられた1999年4月以降、13例の報告があり、このうち3件は今年に入ってから。
1件は飼い犬、2件は繁殖犬からの感染が分かっている。道内での報告はない。
まえたに動物病院(札幌市北区)院長で、札幌市小動物獣医師会の前谷茂樹副会長は「犬同士の感染は交尾と、尿や子宮分泌物などの汚物を口にすることで起きる。
犬が集まる所で知らないうちに感染する」と指摘。
感染は飼い犬の流産で血液検査をして分かるケースが多いという。
治療は抗生物質の投与が有効だが、再発することもあり、長期間の投与が必要。完治しないケースもある。
人への感染は犬の流産時の汚物や尿・精液を触ったりすることで起きる。
潜伏期間は1週間から数カ月と幅広い。
国立感染症研究所獣医科学部の今岡浩一室長は「通常、人は感染しづらく、人から人への感染報告もないが、発症した際、治療のため6週間にわたり2種類の抗生物質を服用する必要がある」と説明。
原因不明の熱が続き、犬を飼っている場合はブルセラ症の可能性もあると助言する。
今岡室長によると犬ブルセラ症は国内に広がっており、道内の犬が感染している可能性も否定できないという。
前谷副会長は「今後、獣医師会で注意を呼びかけることも検討したい」と話している。

毎日新聞
 2008年11月05日 ペットナビ:最近、集団感染が起きた「イヌブルセラ症」は、どんな病気?
◆最近、集団感染が起きた「イヌブルセラ症」は、どんな病気?
◇多頭飼育で一気に拡大 オスは精巣炎、メスは流産頻発
イヌブルセラ症は、動物から人にうつる人獣共通感染症の一つ。
ブルセラ・カニス菌(犬流産菌)の感染によって引き起こされる。
「ブルセラ」という名称は、菌の発見者である英国人微生物学者デビッド・ブルースの名前と、微生物の分類に使われるラテン語の接尾辞「エラ」が合わさって付いた。
国立感染症研究所(感染研)が03〜06年、首都圏の動物愛護センターに保護された479頭を対象に行った調査では、2・5%に感染歴があった。
●まれに人にも
感染すると犬のオスは精巣炎に、メスは胎盤炎などによる流産を繰り返すようになる。
人間はまれに犬の胎児などに接触して感染することがあり、頭痛や発熱など風邪に似た症状が出る。
発症しないことも多く、人から人への感染例はない。
犬、人ともに抗生物質で治療できる。予防ワクチンは開発されていない。
なお、人にうつるブルセラ症はイヌ以外にも、ヤギ・ヒツジ▽ブタ▽ウシ――の3種類があり、それぞれ症状が異なる。
●交尾や経口感染で
イヌブルセラ症は命にかかわるような重い病気ではないが、症状は分かりにくい。日本大学生物資源科学部教授で獣医学博士の津曲茂久さんは「流産が続き、検査を受けてみて初めて気付くケースがほとんど」と話す。
日本では71年、米国から輸入された実験用の犬で初めて感染が確認された。犬同士では交尾で感染することが多いが、授乳や、流産した胎児や出産時の分泌物、尿をなめることによる経口感染も目立つ。
多頭飼育の場合、1頭感染すると広まりやすいので注意が必要だ。
感染研が03年以降、把握している集団感染は静岡や沖縄、愛知など計5件。
いずれも繁殖施設やペットショップで起きた。
07年、大阪府内の繁殖施設で発生した際は、府が100頭以上を殺処分する結果になった。
先月、集団感染が判明したのも、東京都品川区のレンタル犬サービス会社。
検査の結果、2店舗で飼われていた59頭のうち、18頭が陽性、38頭が疑陽性と判明した。
また、店舗内のペットホテルを利用した飼い犬数頭からも疑陽性の反応が出た。
●検査は継続的に
では、飼い犬に感染の疑いがある場合はどうすればいいのか。
千葉県庁衛生指導課の佐藤至さんは「避妊や去勢手術をしていればリスクは低いが、心配なら動物病院で検査を受けてほしい」と呼びかける。
検査では、菌の増減を数カ月おきに見る必要がある。
陽性なら、抗生物質の投与や注射を施し、菌の増減を見ながらの治療を行う必要がある。
他の犬との接触を避け、排せつはなるべく室内ですませるよう心掛ける。散歩するなら、排せつ物に30倍程度に水で薄めた塩素系消毒液をかけて殺菌し、感染拡大を防ぐようにする。
感染研獣医科学部室長、今岡浩一さんは、「犬と飼い主の健康を守るため、業者や施設は自主的に検査をするのが当然だ。
飼い主も犬を購入する際に、検査したかどうか聞くなど、注意してほしい」と話している。【田後真里】

毎日新聞
 2008年10月21日 イヌブルセラ症:集団感染 施設利用の犬も疑陽性 拡大へ不安募る−−東京・千葉
レンタル犬サービス会社「ジャネット」(東京都品川区)の所有する18頭がイヌブルセラ症に集団感染した問題で、ドッグカフェやドッグラン、ペットホテルなど同社施設を利用した飼い犬数頭からも疑陽性の反応が出たことが分かった。
陽性かどうかは再検査を要するが、関係者はペットを巡る新ビジネスを介した感染の広がりに不安を募らせている。
ジャネットが運営する五反田(品川区)と浦安(千葉県浦安市)の両店で、感染が明らかになったのは2日。
所有する59頭のうち18頭が陽性、38頭が疑陽性と判明した。
同社は両店を閉鎖し、都動物愛護相談センターや保健所に報告した。
人に感染した場合、発熱やだるさなど風邪に似た症状が出る。
犬は著しい症状は出ないが、流産などを起こす。
浦安店を利用していた女性(36)は「私の犬は陰性だったが、感染防止策も確立されておらず、素直に喜べない」と不安を口にする。
集団発生した原因も特定できず、荒木学社長は犬の隔離場所も確保できずに苦慮している。
「症状が分かりづらいのでまん延しているかもしれない。
行政には犬の抗体検査を義務付けてほしい」と訴えている。【長野宏美】
■ことば
◇イヌブルセラ症
ブルセラ・カニス(イヌ流産菌)という細菌が発生源。犬から人への感染は99年以降に9例報告があるが、犬については報告義務がなく実態は不明。
国内の犬の5%程度に感染歴があるとされる。07年には大阪府で集団感染し、府が100頭以上を薬殺処分し、動物愛護団体が抗議する事態に発展した。
感染力は弱く、通常の生活で感染することはまれという。
人から人へは感染しない。

朝日新聞
 2008年10月16日 犬ブルセラ症、感染広がる 流産の病気、検査義務なく
犬が流産などを繰り返す感染症「イヌブルセラ症」の集団感染がここ数年、各地の繁殖施設で相次いでいる。
検査の義務や規制は特にないため、業者任せの対策はどうしても後手に回る。
専門家は「業界全体で感染を減らす努力が必要なのに……」と気をもんでいる。(見市紀世子)
「どこから感染したのか」。
東京・五反田と千葉・浦安でドッグカフェと犬のホテルを経営していた男性(43)は肩を落とした。
レンタル向けに飼っていたオス犬と交配したメス犬が8月末に流産した。
2度続いたので気になり、東京と千葉の店で飼っていた62頭を調べたところ、18頭からブルセラ症の陽性反応が出た。
結果を地元の保健所に報告し、今月3日までに両店を閉めた。犬はすでに隔離しており、これから治療する。
経営者は「浦安の店は5月にオープンしたばかりだったのに」と悔やみきれない様子だ。
国立感染症研究所(東京都新宿区)によると、集団感染は、静岡、沖縄、大阪、愛知の各府県で報告されている。
大阪では繁殖業者が犬の所有権を放棄し、139頭が安楽死処分となった。
この処分に愛護団体などが反対したことで注目を集めた。
人への感染も99年以降9件明らかになっている。
今年8月には、名古屋市のペットショップで死産した犬の赤ちゃんを2人が素手で触って感染し、うち1人が入院した。
しかし、繁殖業者の関心は高まっていないのが現状だ。
関東地方のある繁殖業者は「検査すべきだと思うが、費用の問題がある。
狂犬病の注射すら受けない業者も多いなかで、致命的ではないブルセラ症への対策は今の業界では無理だろう」と打ち明ける。
インターネットの交流サイト「獣医師広報板」を主宰する大阪市の獣医師、川村幸治さんは「繁殖や売る前に検査して『ブルセラ症ではない』と証明書を付けるべきだ」と話す。
獣医師らで意見交換し、政府や業界団体などに要望書を送ったが、反応はなかったという。
感染研獣医科学部の今岡浩一室長は「発生時に施設が受けるダメージは大きい。
市中に感染犬を出さないためにも、業者は検査し、菌を施設内に入れないようにすべきだ」と指摘した。
<イヌブルセラ症> ブルセラ・カニス菌による感染症で、犬の流産時の分泌物や尿などを介してうつり、精巣炎や流産を引き起こす。
国内の犬の数%に感染歴があると言われる。
人に感染すると、発熱などの風邪に似た症状が出ることがある。
ただし、感染力は弱く、一般で飼うペットの場合は普通の触れ合いであればあまり神経質になる必要はない。
犬が流産を繰り返すようであれば、獣医師に相談する。検査費用は8千円程度という。
■イヌブルセラ症の主な集団感染例(数字は陽性犬の頭数)
03年 静岡県 繁殖施設 51頭
05〜06年 沖縄県 繁殖施設(2カ所) 16頭
06〜07年 大阪府 繁殖施設 139頭
08年 愛知県 ペットショップ 14頭
08年 東京都・千葉県 レンタル犬の店 18頭

読売新聞
 2008年10月16日 「レンタル犬」集団感染症 18匹が陽性、営業中止 品川の業者=東京
ペットを飼えない人に犬を貸し出す品川区内の「レンタル犬」サービス業者の犬18匹が、流産などを繰り返す「ブルセラ症」に感染していたことがわかった。
感染しても直ちに犬が死ぬ危険性はないが、人への感染例もあり、体のだるさなどの症状が出るという。
感染拡大を防ぐため、業者は今月初旬、同区内と千葉県浦安市内の2店舗の営業を中止した。
業者は「ジャネット村」を経営する「ジャネット」(品川区西五反田)。
同社によると、7月に浦安店のオスと、外部から委託されたメスを交配し妊娠したが、9月に流産した。
メスが以前にも流産を経験していたことから、五反田本店も含む全59匹を検査したところ、18匹が陽性、38匹が陽性の疑いを示した。
都動物愛護相談センターに報告するとともに、10月3日に両店舗を閉鎖。
すべてを症状ごとに分けて管理しているが、今後、引き取り手を探し譲渡するという。
同社は約1600人の会員客に経緯を連絡。荒木学社長は「感染を広めないためにも、当社の犬や施設の利用者はできるだけ早く検査を受けてほしい」と話している。
厚生労働省結核感染症課などによると、ブルセラ症については、昨年1月に大阪府和泉市内の犬繁殖業者で118匹が感染した例がある。
今年8月には名古屋市内で人への感染も報告された。
犬の検査は義務づけられておらず、予防ワクチンもない。
レンタル犬は、ペットを飼えない人が多いという住宅事情などを背景に、10年ほど前から全国の都市部を中心に業者が登場し、人気を集めている。
同社は1998年にジャネット村を創設。現在、2店舗のほかドッグ・カフェも運営している。

毎日新聞
 2008年10月15日 <イヌブルセラ症>レンタル犬会社の18頭集団感染
小・中型犬を有料で貸し出すレンタル犬サービス会社「ジャネット」(東京都品川区)の所有する18頭が、人や家畜にも感染する「イヌブルセラ症」に集団感染したことが分かった。
人への感染は現在のところ、確認されていないという。
ジャネットの説明によると、五反田(品川区)と浦安(千葉県浦安市)の両店で所有する計59頭のうち、2日に18頭が陽性、3頭が陰性、38頭が再検査を要する疑陽性と判明したという。【長野宏美】

読売新聞
 2008年10月15日 イヌブルセラ症にペット犬18頭が感染 人的被害は確認されず=千葉
浦安市内のペット犬取扱店で、ヒトにも感染する恐れのある「イヌブルセラ症」の犬が、18頭確認されたことが14日わかった。
市川保健所によると、感染確認は県内初めて。
これまでにヒトへの被害は確認されていないという。
同保健所と市は注意を呼びかけている。
イヌブルセラ症は、動物からヒトにもうつる「人獣共通感染症」の一つ。
細菌の「ブルセラ・カニス」に感染した犬は死・流産などになる。
感染犬の死骸(しがい)、流産時の汚物などに触れると、まれに感染することがある。
症状は発熱、悪寒、倦怠(けんたい)感で風邪に似ている。
同保健所と市によると、ペット犬取扱店で9月上旬、レンタル犬の流産があり、同症ではないかと指摘を受けた。
検査の結果、「疑陽性」となり、その後、全頭検査をしたところ、陽性18頭、疑陽性38頭、陰性3頭と判明した。
同店は10月3日、保健所に検査結果などを報告し、営業を自粛した。
犬のレンタル、譲渡先を調べたが、ヒトの発症は出ていない。
保健所と市は「流産した犬の看病などの際は手袋とマスクの着用を徹底してほしい」と話す。
国内で初めて感染が確認されたのは1971年。2003年には静岡県、07年には大阪府の繁殖施設で集団感染が発生し、ヒトへの感染例もあるという。

中日新聞
 2008年09月13日 イヌブルセラ症確認 市内初 2患者、入院と軽症 犬から感染
 【愛知県】市は十二日、犬を通じて感染する人獣共通の感染症「イヌブルセラ症」の患者が二人見つかったことを明らかにした。犬から人への感染例が確認されたのは国内三、四例目で、市内では初めて。一人は入院しているが、快方に向かっている。
 この感染症を引き起こすブルセラ・カニス菌は犬の3−5%が保有。犬になめられたり、体を触ってもほとんど感染することはないが、犬の体液や流産した犬の赤ちゃんに触ると、人に感染する。発熱など風邪のような症状が出るが、重症はまれ。人から人には感染しないとされる。
 市内のペットショップの経営者(71)と男性職員(44)が七月下旬、発熱や頭が重いなどの症状を訴えた。経営者は八月初めに入院。国立感染症研究所で検査したところ、感染が確認された。男性職員の症状は軽い。
 六月下旬に二人で犬の出産を介助した際、流産した犬の赤ちゃんの胎盤などに素手で触れたため、感染したとみられる。
 市健康増進課は「犬に触った後は手をよく洗ってほしい。出産に立ち会う時は必ず手袋をして」と話している。

朝日新聞関西版声欄
 2007年11月5日 動物病原体法規制進めて
大阪市の動物愛護団体が伝染性の皮膚病歴のある犬の飼育を滋賀県高島市で計画し、反対住民と話し合いが続く。
当初ブルセラ症に感染した犬が搬入される可能性も指摘されていた。
ブルセラは経済産業省所管の独立行政法人「産業技術総合研究所」特許生物寄託センターでずさん管理が発覚した病原体だ。
人が感染すると発熱などの症状が現れ死ぬ危険もある。
ブルセラ症など動物から人に感染する「人畜共通感染症」の動物を巡っては重大な問題が潜む。
病原体の管理はこれまで研究機関の自主対応に任されてきたが、6月施行の改正感染症予防法で法規制の枠組みが出来た。
しかし、自然感染した動物は病原体としての規制の対象外だ。
感染動物そのものを管理区域外へ持ち出すことは、制度上規定されていないという。
こうした現状では、感染動物を含む可能性のある保護施設を巡り、トラブルが全国で起こりうる。
施設規制や獣医師の施設常駐の義務づけなど、明確な指針を国は示して欲しい。

朝日新聞
 2007年10月17日 特許生物寄託センター、危険病原体をずさん管理 約300株、内規違反
 経済産業省所管の産業技術総合研究所の特許生物寄託センター(茨城県つくば市)が、人に健康被害が出るおそれのある病原体約300株を、内規に違反して受け入れ、十分な感染防止設備もないのに、非常勤職員に培養などをさせていたことがわかった。この事実に気づいて早急な対応を求めた元幹部に対し、口外しないよう、再三、求めていた。経産省は遅くとも03年に、こうした事実を把握していた。特に危険とされる病原体3株は今年6月の法改正施行で届け出が必要になったため、5月末に処分していた。(石田勲、柿崎隆、坪谷英紀)
 同センターは、微生物を利用した特許の出願に必要な証明書を交付するため、特許発明者から微生物を預かり、管理を請け負う施設。ただし、世界保健機関(WHO)の国際基準を満たす十分な感染防止設備がないため、04年までは危険性の低い「生物危険度レベル1」の微生物しか受け入れることができないと内規で定めていた。
 しかし、朝日新聞が入手した内部文書によると、01年の時点で、人に症状が出る危険性のある「レベル2」以上の病原体296株を受け入れていた。このうち、84年、88年、90年に2法人1個人から受け入れた3株は、「レベル3」の病原体で、人が感染すると発熱などを起こし、最悪の場合は死に至ることもあるブルセラ菌2株と鼻疽菌(びそきん)1株だった。
 さらに99年までの間、当時29〜60歳の非常勤女性職員ら8人に計15回にわたり、「レベル3」として受け入れた菌の培養、生存確認試験などの作業をさせていた。女性らは危険な菌であることは知らされずに、無防備なまま試験していた。当時、同センターには通常の実験室しかなく外部からの出入りも自由だった。
 産総研の幹部によると、内規や知識が組織内に十分周知されず、担当職員が無知なまま、危険な菌を受け入れてしまったようだという。また、産総研は、この菌による感染者は確認していない、としている。
 同センターの幹部の一人は01年にこうした事実を把握、産総研や経産省、特許庁などに対処を求めた。だが、産総研はこの幹部に対し、外部に情報を漏らさないよう繰り返し求めた。
 同センターは、04年になって「レベル3」の菌を施錠できる耐火性の保冷庫に密閉、隔離したほか、「レベル2」は受け入れ態勢を整えた。
 産総研の一村信吾理事は取材に「受託できない微生物を受け入れ、生存確認の試験をさせていたのは事実。ただ、何も知らずに試験した人に事実を告知すると、精神的なダメージが大きいと判断し、告げなかった」としている。
 今年6月に改正感染症予防法が施行され、「レベル3」の3株は、バイオテロ対策の規制対象になった。感染防止設備のある施設でしか扱えず、また、所持する場合も国への届け出が義務付けられたため、同センターは改正法施行の前日の5月31日に3株を処分した。その一方で、一村理事は「2年前に菌の一部を研究機関に預けていた。その菌を調査した結果、今年7月に3株とも危険性の低いレベル1との結果を得た」と説明している。

 ◆キーワード
 <特許生物寄託センター> 微生物が医薬品などの有用物質を作り出す機能などがあることを発見すると、審査を経て生物特許として認められる。出願する場合、微生物の存在を証明して技術を公開するため、センターに微生物を預け、「受託証」を受ける必要がある。70年に特許庁から日本初の寄託機関として指定された。
 ■生物危険度レベル分類(WHO指針)
 【1】扱える病原体
 【2】病原体
 【3】必要な設備
 <レベル1>
 【1】疾患を起こす可能性があるが、重大な災害の可能性はない
 【2】レベル2、3、4に属さない細菌、ワクチン株など
 【3】特になし
 <レベル2>
 【1】実験室での暴露は重篤な感染を起こす可能性はあるが、有効な治療法がある
 【2】ピロリ菌、セラチア菌、黄色ブドウ球菌など
 【3】白衣、マスク、作業台
 <レベル3>
 【1】重篤な疾患を起こすが、通常は他には拡散しない
 【2】ブルセラ菌、鼻疽菌、炭疽菌、ペスト菌、SARSウイルスなど
 【3】特別な保護衣、入室の制限、一定の気流方向の管理
 <レベル4>
 【1】重篤な疾患を起こし、感染した個体から他へ伝播(でんぱ)しうる
 【2】黄熱ウイルス、天然痘ウイルス、エボラウイルスなど
 【3】レベル3の設備に加え入り口にエアロック、出口にシャワー

朝日新聞大阪声欄
 2007年08月29日 ブルセラ症犬、業者の責任を
大阪府和泉市内の繁殖業者が飼育していた犬の一部が流産などを繰り返す「ブルセラ症」に集団感染した。感染していない陰性犬の引き取り先をさがす府主催の譲渡会が7月下旬に開かれ、ボランティアとして参加した。
 計3日間の譲渡会を経て、対象の約20種類の大型犬や小型犬89匹すべてが譲渡された。
 しかし、事前に希望の引き取り先を訪問し、適格とされた家庭だけに譲渡される予定だったが、集合住宅でのペット飼育許可証を持参していない希望者にも譲渡されるなど、事前調査が生かされていない事例も見受けられた。

 今回の事件で驚いたのは、繁殖業者がこんな事態を起こしながら、なんの罰則もないという。
 現行の法律では報告義務違反での行政指導だけだという。大阪府は二度とこういう事件が起こらないよう業者を告発して、責任を問うべきだ。
 でなければ、安楽死させられた119匹の「ワンちゃん」は浮かばれまい。

産経新聞
 2007年05月11日 府管理の1匹が感染 ブルセラ症、殺処分に
和泉市内の犬の繁殖販売業者が飼育していた犬が、「ブルセラ症」に集団感染した問題で、府が羽曳野市内で管理している1匹が感染していたことが判明し、府は10日、感染の拡大防止のため安楽死処分した。
 一般への譲渡を進めるために行った血液検査で見つかった。府は残りの111匹について今月下旬に再度検査を行い、感染していないことが確認されれば、6月中旬をめどに譲渡を始める方針。
 この問題をめぐっては先月28日に、感染していた陽性犬119匹が安楽死処分されている。

産経新聞
 2007年04月28日 「ブルセラ」犬119匹処分 大阪府、混乱避け早朝に 愛護団体即時抗告中
 大阪府和泉市内の犬の繁殖販売業者の飼育犬が、流産などを繰り返す「ブルセラ症」に集団感染した問題で、府は28日未明、蔓延(まんえん)防止のため感染反応が出た陽性犬119匹の安楽死処分を行った。処分は当初、2月に実施する予定だったが、現場で動物愛護団体らが抗議したため延期され、2カ月にわたり両者のにらみ合いが続いていた。府は処分について「感染拡大防止のため苦渋の判断」と説明している。
 処分は府の獣医師14人が午前4時45分から8時40分まで、注射で睡眠薬を過剰投与して行った。府では同日中に死骸(しがい)を岐阜県内の施設に運搬し、焼却処分する方針。一方、感染しなかった陰性犬113匹については6月以降、飼育希望者に譲渡する。
 集団感染は昨年12月に発覚。府は、まれに人間に感染する恐れがある上、問題の繁殖業者が経営破綻(はたん)して飼育できない状態だったため、約260匹の犬を引き取る形で管理していた。
 処分は今年2月、日本動物福祉協会(東京)など外部専門家らでつくる「ブルセラ病感染犬等救援本部」が「治療しても再発の可能性が高く、感染拡大の恐れがある」として安楽死の方針を決定。2月27日に処分しようとしたが、動物愛護団体らによる抗議活動で中止。さらに団体側は殺処分禁止を求める仮処分を大阪地裁に申請したが、4月12日に却下され、即時抗告の最中だった。
 今回の処分について、府動物愛護畜産課は「救援本部会議の方針に従い、苦渋の判断で処分した。早朝に実施したのは混乱を避けるため」と説明している。一方、抗議活動を続けてきた動物愛護団体「アーク・エンジェルス」(大阪市都島区)の林俊彦代表(60)は「殺処分差し止めについて高裁、最高裁の判断を仰ぐつもりだったのに、処分を強行する府は許せない」と話している。
 安楽死の現場となった大阪府和泉市の山中にある民家では、職員らが処分した犬を段ボール箱に1匹ずつ入れ、2トントラック3台に詰め込んだ。一つひとつの箱の中にカーネーションを入れ、トラックが出発する際には手を合わせて見送る職員の姿もあった。
 近くに住む会社員男性(43)は「以前から、飼育状態が劣悪なのは聞いていた。殺処分は仕方ないが、犬に罪はない。人間のエゴで犠牲になり、気の毒だ」。主婦(35)は「できれば、どこかに隔離すればよかったのかもしれない」と述べた。

産経新聞
 2007年04月26日 ブルセラ犬問題 対立2カ月 糸口見えず 大阪府Vs愛護団体
◆職員派遣、連日世話
 大阪府和泉市内の犬の繁殖販売業者の飼育犬が、流産などを繰り返す「ブルセラ症」に集団感染した問題で、蔓延(まんえん)を防ぐため、感染の陽性反応が出た犬の安楽死を決めた府と、殺処分の禁止を求めて大阪地裁に仮処分を申し立てた大阪市の動物愛護団体などがにらみ合いを続けている。地裁は今月12日、申し立てを却下したが愛護団体は今後も争う考え。繁殖業者が飼育できないため、府は犬の世話に交代で職員を派遣しているが、問題解決の糸口は見つかっていない。

 ■「集団」は異例
 「和泉の繁殖販売業者で飼われている犬がブルセラ症らしい」
 昨年12月、府に寄せられた1本の電話をきっかけに、府は和泉市の業者への立ち入り検査を実施した。民家を転用した飼育場には、飼育かごが何段にも重ねて置かれ、チワワやラブラドルレトリバーなど小型犬から大型犬まで約260匹が飼われていたが、水道はなく、電気も止められていた。
 検査の結果、このうち118匹の感染が確認されたため、府は陽性犬を留め置き、感染していない犬だけを別の場所に移した。
 ブルセラ症の犬の集団感染は平成15年、静岡県の繁殖業者で51匹の感染例が報告されているのみ。府は日本動物福祉協会(東京)など外部専門家の協力をえて「ブルセラ病感染犬等救援本部」を設置し、対応を協議した。

 ■防止か愛護か
 経営が立ちゆかなくなった繁殖業者に犬の飼育を続ける余力はなく、同症はまれに人間に感染する危険性があるため、府は感染拡大の防止を目的に、犬の所有権を受け継ぐ形で、犬の世話をすることになった。救援本部が対応を検討した際、メンバーから「陽性犬は再発の可能性が高い」「アメリカでは陽性犬は殺処分されている」など感染の拡大防止を優先する意見が大勢を占め、府は犬の安楽死処分を決めた。
 しかし2月27日、府が殺処分を実施する直前、複数の愛護団体が飼育場の前で、抗議活動を展開し、中断せざるをえなかった。愛護団体側は「安易に殺処分にすべきでない」などと主張。殺処分禁止を求める仮処分を大阪地裁に申請したが却下され、即時抗告した。
 府は「殺処分したくないが、ブルセラ症は完治せず、飼い主が知らぬ間に感染が広がる可能性が高い」と説明し、速やかに処分したい考えだ。

 ■責任の所在
 陽性犬の処分問題が宙に浮いたまま2カ月になるが、清掃や餌やりなどの世話に人手がかかるため、府環境農林水産部の職員10人近くが連日、飼育場に通っている。感染を防ぐため白い作業着とマスク姿での作業で、ある職員は「水道も排水設備もない。どんな飼育を続けていたのかと思う」と話すほど、劣悪な飼育環境だった。
 繁殖業者の責任について府は、「動物愛護法上の虐待とまでいえず、報告を怠ったという部分で指導するしかない」と苦しい事情を打ち明ける。
 ペット法学会副理事の吉田真澄・帯広畜産大教授は「ブルセラ症は牛など家畜が感染すれば家畜伝染病予防法で連絡義務があり、違反すれば懲役3年以下か100万以下の罰金を科されるが、犬は対象外。感染防止という視点で業者を罰するには、動物愛護法では難しいのが実情」と指摘する。
 昨年6月の改正動物愛護法で、繁殖業者は届け出制から登録制に厳しくされた。しかし府の態勢では、「立ち入り検査は開設時と数年に1度程度にならざるをえない」として目が行き届かない事情があり、繁殖業者の責任を問えないつけは府民にもまわっている。

朝日新聞
 2007年04月13日 ブルセラ犬の愛護団体の仮処分、申請却下
和泉市の繁殖業者が飼育していた犬の一部が、流産などを繰り返すブルセラ症に集団感染した問題で、陽性犬の安楽死処分を決めた府を相手取り、犬の所有権を主張する大阪市の動物愛護団体「アーク・エンジェルズ」が処分禁止を求めた仮処分申請に対し、大阪地裁は12日、同団体の所有権を認めず、申し立てを却下した。府は陽性犬119匹の安楽死処分を「すみやかに実施する」としている。陰性だった犬113匹は府の施設で職員らが世話を続けており、6月上旬以降、一般から飼い主を募集する方針。

産経新聞
 2007年04月13日 無責任な繁殖業者に怒り
 犬猫が常に側にいる環境で過ごしてきたので、和泉市の犬繁殖販売業者で犬ブルセラ症の集団感染が発生した事態は、取材をしていて本当に切ない。
 感染拡大防止のため、府が1民間業者から所有権を引き継ぐ形で現在世話を続けているが、感染が確認された100匹超の陽性犬は、安楽死処分が決まっている。
 これに動物愛護団体が「安易な殺処分はすべきでない」と反対。大阪地裁に処分禁止を求める仮処分申し立てを行い、現在、処分が先送りになっている。感染症拡大防止という目的に加え、毎年4000匹近い犬が府内の保健所に運び込まれて殺処分されているという現実もあり、陽性犬だけを特別視はできない。それだけにこうした事態を招いた、無責任な繁殖販売業者への怒りが増す。
 先日、和泉市の問題の業者の施設まで行ってきた。単なる3階建ての一軒家で、近づくと「ウォウォーン」と一斉に陽性犬の鳴き声が降りかかる。当初260匹いた犬は、陽性犬だけ留め置いて隔離しているため、半減しているはずだが、それでも犬かごが数段も積まれている状態だ。
 府が立ち入り検査をしたとき、この民家の電気は料金滞納で止められ、水道も排水設備もなかったという。業者は犬にくみ上げた井戸水をやり、汚水は地面に垂れ流していたようだ。今は府職員が水や餌を運び込んでいる。
 しかし肝心の業者に対し、ペナルティーを科すのは難しい。「動物愛護法でいう虐待は、餌をわざとやらないというレベル。今回のケースでは当たらない」(府動物愛護課)ので、報告義務違反での行政指導にとどまりそうだ。専門家も同じ意見だった。
 人気の高い種が高価で売買される裏側で、悪質な業者が生まれていることを、悲しく思う。こうした犬が二度と生まれないよう、制度や法律に不備があるなら是正してほしい。

朝日新聞
 2007年03月03日 大阪府のブルセラ犬安楽死「やめて」愛護団体、仮処分申請
 大阪府和泉市の繁殖業者が飼育していた犬が流産などを繰り返すブルセラ症に集団感染し、府が約100匹の安楽死処分を決めた問題で、大阪市の動物愛護団体「アーク・エンジェルズ」(林俊彦代表)が2日、犬の所有権の譲渡を受けたとして、処分禁止を求める仮処分を大阪地裁に申し立てた。2月末、府と愛護団体などが対立して処分が延期された経緯もあり、犬たちの処遇決定はさらに長期化しそうだ。
 申立書によると、和泉市の繁殖業者は1月、和歌山県の愛護団体に犬の所有権を譲渡。その後、府が犬の管理に乗り出し、団体は所有権を放棄した。だが、府が感染犬の安楽死方針を決めたことから、団体が所有権放棄を撤回してアーク・エンジェルズに譲渡したとし、「所有権がない府に犬を処分する権限はない」と主張している。一方、大阪府は「犬の所有権は府にある」との見解を示している。

読売新聞
 2007年02月27日 大阪・和泉のブルセラ症感染 犬103匹 団体抗議で安楽死先送り
 大阪府和泉市内の繁殖業者が飼育していた犬が、流産や死産を繰り返す「ブルセラ症」に集団感染していた問題で、府が27日、陽性の103匹を安楽死処分しようとしたところ、動物愛護団体の会員らが犬が飼育されている民家前に壁をつくり、午前7時過ぎごろから府職員とにらみ合いが続く事態になった。府は、正午に同日の処分の中止を決めた。
 民家前にはこの日、愛護団体の会員やボランティアら約40人が未明から集まっていた。午前7時過ぎ、府職員約10人が到着すると、「罪のない犬を殺すな」などと書いたプラカードを掲げて壁を作った。職員は「感染拡大の恐れがあり、安楽死はやむを得ない」と説得したが、ボランティアらは「安易に殺処分を選ぶべきでない」と繰り返し、平行線が続いた。
 経営難などから業者が所有権を放棄し、1月以降、府が特例的に引き取ったが「治療を続けても再発の可能性があり、譲渡は難しい」として安楽死処分を決めていた。陰性の137匹は今後も譲渡先を探すが、東大阪市の愛護団体「ファーストフレンド」の女性会員(34)は「時間をかけて治療するなど、方法はいろいろある」と憤っていた。

朝日新聞
 2007年02月03日 「商品ペット」無情 無理な交配で遺伝病・放置 繁殖業者の虐待、行政苦慮
 空前のペットブームの陰で、増え続ける繁殖業者(ブリーダー)によって、犬などが虐待されるケースが後を絶たない。経営難などで餌を与えられないまま放置されたり、無理な交配で遺伝病に侵されながら、治療を受けられなかったりして、動物愛護団体などに保護されるペットが増えている。こうした実態に法整備が追いついておらず、行政も対応に苦慮している。(島脇健史)
 辺り一面に広がるふんや尿のにおいが鼻をつく。大阪府和泉市の郊外の一角に、細菌感染で死産などを繰り返す「ブルセラ症」に犬が集団感染したブリーダーの飼育場はある。
 屋外では、シベリアンハスキーやラブラドルレトリーバーなど大型犬約130頭が飼育されている。多くは狭いおりの中で散歩にも出られない。約30頭は「宿無し」で、雨露にさらされて泥まみれだった。自宅を兼ねた室内には3段に積み上げられた数十個のおりが所狭しと並び、やせ細った100匹以上の小型犬が餌を求めて激しく鳴く。
 ボランティアで世話をしているのは元従業員の女性(39)。従業員は一時、10人いたが、一度も給料が払われずに次々とやめた。ペット店でアルバイトしながら面倒を見ていたが、餌と水をやるのに朝から晩までかかり、3日に一度しか餌にありつけない犬もいた。
 昨年10月、チワワ1匹が流産したのを機に、毎週のように流産する犬が出たため、従業員の一人が「ブルセラ症ではないか」とオーナーに進言した。だが、隔離されなかったために感染が拡大。女性は「行政に知れたら殺処分されてしまう」と考え、動物愛護団体に通報した。経営難に陥ったオーナーは1月半ば、犬を残して姿を消した。
 陽性が確認されたのは計118匹。飼育場は府の管理下に置かれたが、今後も陰性の犬が発症する懸念が残る。犬たちの命が救われるかどうかは、わからない。
 ●売れ残り処分も
 子犬の値段は、人気のチワワなら10万円、トイプードルは20万円を超す。一方で、病気の治療費や検査費など1匹あたり数万円以上の費用と、朝夕の餌やりなどの手間もかかる。
 「もうかるから、とネットでペットを販売する個人業者が増えているが、管理できずに捨てたり、放置したりする例も少なくない」。大阪府内のブリーダーの女性は指摘する。和歌山県の動物愛護団体「ワンライフ」の南宮武司さん(36)も「売れ残った犬は里親に出すべきなのに、勝手に殺処分する業者もいる」。
 環境省によると、都道府県へのペット業者の届け出件数は、01年の約1万2千件が05年には約1万7千件に増加。大阪府能勢町の動物保護団体「アーク」は、無届け業者を含めると、その数は倍以上にのぼるとみる。
 一昨年、ブリーダーから段ボール3箱がアークに持ち込まれた。中には犬200匹の死骸(しがい)。遺伝病にかかり、大半が目や脚がなかった。エリザベス・オリバー理事長(66)は「無検査のまま無理な交配をさせた結果、遺伝病に侵される犬が増えている。行政の目も届いていない」と指摘する。
 ●放置後の扱い、法的根拠なし
 昨年6月に施行された改正動物愛護法で、ブリーダーは届け出制から登録制となり、飼育の資格を持つ責任者を置くことが義務づけられた。餌を与えないなどの虐待で科せられる罰金も、30万円以下から50万円以下に引き上げられた。
 だが、どの自治体も担当者が限られており、「業者の立ち入り検査は2年に1回程度が限度」との見方が大半だ。業者が放置した犬を誰が面倒をみるかについての法的根拠もない。
 大阪府の担当者は「税金を使って業者の尻ぬぐいをしてでも保護するか、殺処分に踏み切るか難しい」と打ち明ける。
 ○愛護団体と連携はかれ
 ペット法学会副理事長の吉田真澄・帯広畜産大教授の話 動物愛護法の改正は、規制を厳しくして悪質な業者を市場から退場させるのが狙いだったが、残された犬を保護するシェルターが不足しているなど退場させた後の手当てがない。行政のマンパワーは限られており、動物の保護や引受先探しなどのノウハウを持つ愛護団体を育成しながら、連携を図るべきだ。

読売新聞
 2007年01月19日 和泉の飼育犬118匹「ブルセラ症」感染 府、救援本部設立へ
 府は18日、和泉市内の繁殖業者が飼育していた犬257匹のうち、118匹が流産などを繰り返す「ブルセラ症」に集団感染していたと発表した。近く日本動物福祉協会などと救援本部を設立し、ボランティアの協力も得ながら譲渡先を探す。
 集団感染の可能性があるため府が11日から調査。採血し、府立公衆衛生研究所などで分析した結果、オス17匹とメス101匹の感染が判明した。繁殖業者が所有権を放棄したため、現在はボランティアらが世話をしているという。治療に公費を支出するのは難しく、府動物愛護畜産課は「ボランティアや愛護団体には資金、人員両面での協力を求めたい」としている。

産経新聞
 2007年01月10日 犬がブルセラ症 集団感染、流産など多発 和泉
大阪府和泉市内の犬の繁殖販売業者が飼育していた犬が、ヒトや家畜などにも感染する「ブルセラ症」に集団感染した疑いがあることが9日、わかった。約260匹の犬は業者が今月5日に所有権を放棄し、現在は和歌山県内の動物愛護団体が世話をしている。人に感染した報告はないというが、府は11日に全頭の採血検査をするなどして詳しく調査する方針。
 府動物愛護畜産課によると、業者は約260匹の犬を飼育していたが、流産や死産などブルセラ症の典型的症状が多発したため昨年11月、48匹を抽出して動物病院で検査したところ、19匹がブルセラ症と診断されたという。
 診断結果を受け、業者は感染した犬を隔離していたが、隔離方法が不十分だったため感染が拡大している可能性があるという。
 府に「飼われている犬がブルセラ症らしく経営が怪しい。このままでは虐待になりかねない」と通報があり、昨年12月末から年明けにかけ、適正な飼育をしているか立ち入り検査を行っていた。虐待などの事実は確認できなかったが、狭い場所で犬が増え過ぎていたという。
 同課は「人への感染はきわめてまれな病気で、冷静に行動してほしい」と話している。

琉球新報
 2006年07月24日 犬ブルセラ症/県内で感染初確認/流産や不妊、睾丸炎など/注意呼び掛け/又吉博士学会で発表
23日に那覇市の自治会館で開かれた第37回県獣医学会(主催・県獣医師会)で、家畜衛生試験場の又吉正直主任研究員(獣医学博士)が、県内で初めて犬ブルセラ症が確認されたことを発表した。2005年10月から06年1月にかけて、少なくともプードル、パピヨン、ヨーキー、チワワの8頭の犬ブルセラ症が確認されている。外国では殺処分される事例も多いという。又吉主任研究員は「人への感染で重症になった例はなく、神経質になることはないが、獣医師にも疾病を念頭に置いて検査してほしい」と訴えた。
 犬ブルセラ症は、細菌性の人獣共通の感染症。一九六二年にアメリカで初めて確認されて以来、南米やヨーロッパなど世界各地で確認されている。国内では、七二年と二〇〇三年に静岡県で発生した。県内では中部の犬繁殖施設で、今回初めて確認された。
 流産した犬から娩出された胎児で薬剤感受性検査や抗体検査なども実施され、又吉主任研究員のほかに、県家畜衛生試験所の屋富祖昇さん、高木和香子さん、くどう動物病院の工藤俊一さんも調査に携わった。
 犬ブルセラ症の症状としては、妊娠四十五日から五十日での流産や不妊、睾丸(こうがん)炎などがある。交配のほかに尿やペット同士で鼻をこすり合っても感染するという。県内で犬ブルセラ症が確認された犬は現在、治療が順調に進んでいるというが、又吉主任研究員は「諸外国の例から言っても犬ブルセラ症に百パーセント効果のある治療法がない。治療でよくなるが、場合によっては再発する可能性があるため、感染が見つかった場合、殺処分をすることが多い」と話した。
 今回確認された犬ブルセラ症の感染の原因については、菌の汚染を受けた県外の雄犬からの交配による可能性が考えられると推測している。又吉主任研究員は「インターネットで犬を他府県から気軽に買える時代になった」と話し「一回の流産でも症状が出たら動物病院で検査してほしい」と注意を呼び掛けた。

中日新聞
 2003年12月31日 犬が流産『ブルセラ症』 静岡の施設 集団発症 人に感染、うつ症状も
 静岡県内の繁殖施設で飼われている犬に流産が多発し、国立感染症研究所(東京)が実施した検査で、動物だけでなく人にも感染する可能性がある「ブルセラ症」の集団発症だったことが分かった。
 従業員らへの感染はなかったが、繁殖施設で犬の集団発症が判明するのは異例。厚生労働省は日本獣医師会に情報を提供し、注意を喚起した。
 国立感染症研究所獣医科学部の神山恒夫室長は「人への感染は極めてまれ。流産時の接触など職業上の感染機会を除くと、通常の飼育状態での感染はまず心配する必要はない」としている。
 厚労省などによると、百匹以上の犬を飼育している繁殖施設で夏ごろから流産が多発し、診察を担当している動物病院から原因調査を依頼された国立感染症研究所が、血液検査を実施。その結果、十一月下旬までに、検査した百十四匹のうち五十一匹に感染歴があることが判明、二十七匹の血液からブルセラ症を引き起こす細菌の遺伝子が検出された。
 従業員らの血液検査では、人への感染はすべて否定された。
 ブルセラ症は細菌によって引き起こされる牛や豚、羊、犬など家畜の病気。主に西アジアやアフリカ、ラテンアメリカなどで流行している。動物から人に感染する「動物由来感染症」の一つで、人に感染すると発熱や疲労、うつ状態などの症状が出ることがある。

読売新聞
 2001年06月16日 シカの出産立ち会い医師ら5人感染症 川崎・夢見ヶ崎動物公園
 川崎市立夢見ヶ崎動物公園(川崎市幸区南加瀬)で、飼育するシベリアヘラジカの出産に立ち会った獣医師と飼育職員の計五人が、発熱や頭痛を訴え、飼育動物から人畜共通感染症の一つ「ブルセラ症」に感染した可能性があることが十五日、明らかになった。同市は十六日から当面休園する。
 ブルセラ症は、ヤギ、羊、犬などを感染源にして、血液や体液などを媒体に人にも感染、肺炎などを引き起こすこともあるが、抗生物質で治療でき、死亡することはほとんどなく、国立感染症研究所によると、これまで国内で人への感染はほとんど確認されていないという。

毎日新聞
 1993年05月19日 無防備、人手から人手へ 人にも感染のブルセラ症の犬−神奈川・動物保護センター
業者届け出、危うくセーフ
 人にも動物にも深刻な症状を起こす伝染病「ブルセラ症」に感染した犬が、神奈川県の動物保護センター(平塚市、平山功所長)=NEWSのことば参照=から相模原市の大学職員に譲り渡されていたことが十八日までに分かった。犬の売買業者が感染の事実を知らせずに持ち込んだもので、数日後になって業者が感染の事実を打ち明けたため、職員らは危うく感染を免れた模様。しかし、同センターは動物を引き取る際、病気の有無はチェックしていない。他都県の同様施設でも扱いは似通っており、動物の譲渡時に法規制もないことから、危険性を指摘する声が上がっている。
 譲り渡されていたのは、小田原市内の業者が飼っていた十匹のビーグル犬のうちの二匹。業者は四月二十一日、十匹を連れてセンターを訪れ、業者自身が飼育が困難になったことなどを理由に引き取りを依頼。センターで引き取ったところ、同日中に「犬を飼いたい」と訪れた大学職員が二匹をもらっていった。
 ところが、二日後、業者が「持ち込んだ犬は、ブルセラ症に感染している」とセンターに電話で告白。センターは同日中に犬を引き取った職員に連絡し、犬を獣医に渡して処分してもらうよう要請、二匹は殺処分された。センターに残っていた八匹も、感染していたため、殺処分となった。業者は犬が流産を繰り返すため、三月末に検査を受け、感染していることを知ったが、引き取りを依頼した際、センターに伝えなかった。
 ブルセラ症はブルセラ属の細菌で発病し、犬は流産、精巣炎などを起こす。犬のだ液などから人間にも感染し、波状熱、衰弱、頭痛などの症状が表れる。死亡するケースはないものの、抗生物質を大量に投与する必要があるうえ、治し切らないと何度も再発する。
 センターは動物を飼えなくなった飼い主から動物を引き取ったり、野犬などを捕獲して、新しい飼い主を探すため、首都圏などの地方公共団体が設置している施設。五日たってももらい主が現れない場合は殺処分される。センターが動物を引き取る条件は通常(1)家族の同意を得ている(2)過去二週間、人をかんでいない−−の二点で、伝染病感染の確認はしていない。
 関係者によると、ブルセラ症は米国で十数例、人間への感染例が報告されているが、日本では二十年前、静岡県内での流行をきっかけに、獣医師らによる全国規模の撲滅運動が行われたこともあり、これまで人間への被害は出ていない。
 ◇「うつらなかったのは幸運」
 今回のケースについて調査した東京都日野市の動物愛護団体「動物たちの会」の杉本等さん(44)は「人間に感染しなかったのは幸運。センターの役割を変えない限り、同じことは何度も起こる」と批判。センターの東村純一業務課長は「引き取り時に病気の有無を質問するようにするなどしたい」と話している。
 ◇検査システム急げ
 鈴木達夫・北里研究所病院研究部長(微生物学)の話 動物保護センターのやり方では一般人に病原体が広まる危険性が高い。病気のチェックは技術的に可能なので、犬を検査させるシステムが必要だ。


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